触れること
探索すること
触れることはマッサージやボディワークの基本です。これは体への働きかけの最初の部分です。
すこし、きびしい言い方をすれば触れることは技術以前の技術です。
この技術以前の技術という表現は、触れることは技術の土台であり、触れることに意識が向かないまま、その上に技術を重ねても、技術の質は高まらないということです。
触れることの大切さはロッキングテクニックでも同じです。体を揺らして波を送るとき、その触れ方はロッキングテクニックの質にそのままつながります。
ロッキングテクニックは、もともとおだやかな技術ですが、受け手を揺らすという働きかけを行うため、その点では少々能動的な技術とも言えます。
そこで受け手に技術を受け入れてもらうためには、最初の出会いである触れることが、ロッキングテクニックの印象を大きく左右します。
ロッキングテクニックのクラスでは、触れること、つまりどのように揺らし始めるかを探索すると表現しています。
探索とは未知のものに触れ、その様子や状態、その可能性を探し求めることです。今回の「ロッキングテクニックの基本4」では、探索することについて説明します。
*探索するについては「ロッキングテクニックの基本9」でも詳しく述べています。
探索の技術化
それでは、探索するとは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。それは3つのすることと1つのしないことがあります。
3つのすること
・小さな動きから始める
・ゆっくりと行なう
・好奇心を持つ
小さな動きから
ロッキングテクニックは、どんなときにでも、最初はごく小さな動きから始めます。
なぜなら、受け手の体は未知なものだからです。小さな動きから、体の様子、弾力、抵抗を探ります。
そのため、小さく動かしながら、受け手の体の反応を探ります。新たな抵抗が生じない場合には、徐々に動きを大きくし、さらに受け手の体の弾力に合わせます。この小さな動きから始めることはとても大切なことです。
ゆっくり行う
二つ目はゆっくり行うです。早い動きは受け手の抵抗を引き出す可能性があります。
そのため、最初の動作はゆっくり行います。それではゆっくりとは具体的にはどの程度の速さなのでしょうか。
それは受け手の呼吸の速度とリズムです。多くの場合、人は自分の呼吸の速度よりも早い動きを「早い」と感じ、自分の呼吸よりも遅い動きを「遅い」と感じます。つまり技術の速度とは相対的なものです。そのため、最初は受け手の呼吸よりもやや遅めの動きで関わります。
と言っても、はじめのうちは受け手の呼吸を知ることはむずかしいかもしれません。そこで最初に行うことは、受け手の呼吸を感じることです。感じることから、すべては始まります。
好奇心を持つ
好奇心はすべての技術に有効です。「何だろう?」「もっとよく知りたい」という好奇心は、技術の精度と質を高めます。
好奇心を別の言い方で表現すれば、それは問いかけです。「これは何だろう?」という問いかけを持つことで、技術に言葉では表現できない微細な動きを追加します。
説明が長くなりましたが、実際にはとてもシンプルです。
小さく、ゆっくり、好奇心を持つことはむずかしいことではありません。「何だろう?」と問いかけながら行えば良いのです。そして、状況が分かったら、その情報を元にロッキングテクニックを調整して波を送ります。
1つのしないこと
しないこととは、ポーズをとることです。それは間(ま)をつくることです。
ロッキングテクニックでは、数回揺らしたら、受け手の体から手を離し、一歩引いてポーズをとります。
ポーズとは何もせずに静かに待つ間(ま)のことです。この時間はひと呼吸程度、1、2秒であることもありますし、十数秒、それ以上の場合もあります。
ポーズをとる目的は受け手に感じる時間を与えるためです。体は感じることで変化します。ポーズをとって波が全身に広がるのを待ちます。
ポーズとは響きの時間です。その間に受け手は波の響きや余韻を感じることができます。このポーズをとることで、ロッキングテクニックの効果は何倍にも広がります。
ポーズのもうひとつの利点は、与え手の体のリラックスとリセットです。
与え手はわずかなポーズをとることで、フッと体の緊張を緩め、元の状態に戻ることができます。次の瞬間からまた新しい体で受け手と関わることができるのです。
つまり、ポーズの時間とは、受け手と与え手の両者にとって有益なものです。これはロッキングテクニックだけなく、オイルマッサージの場面でも有用です。
やってみましょう
今回、紹介したことはとてもシンプルです。このシンプルなことが技術全体の質に影響します。これは最初に取り上げた触れること、すなわち技術以前の技術のことです。
触れることの質を向上させるためには、さまざまな方法が存在しますが、小さく、ゆっくり、好奇心を持って触れることは、特にロッキングテクニックにおいて効果的です。
そして数回揺らしたらポーズをとります。この小さく、ゆっくり、好奇心を持つことは、技術の開始時に常に行います。これはセッション全体の冒頭ではなく、それぞれの技術ごとの始まりに、繰り返し行います。
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